- 2026年1月15日
風邪は治ったのに咳が続く?

UACS(上気道咳嗽症候群)と鼻・喉の刺激、FeNOで考える咳の整理
「風邪はもう治ったはずなのに、咳だけが続いている」
「鼻水が喉に回る感じがして、咳が出やすい」
このような症状で受診される方は少なくありません。
診療の現場では、感染症のあとに鼻や喉が過敏になり、そこから咳が誘発されていると考えたほうが自然なケースを多く経験します。
この記事では、
UACS(上気道咳嗽症候群)という考え方を軸に、
鼻・喉と咳の関係、咳喘息との重なり、FeNO検査が役立つ場面について、一般的な観点から整理します。
咳の原因は「肺」だけではありません
咳というと、肺や気管支の病気を思い浮かべがちですが、
実際には鼻・副鼻腔・喉など上気道の状態が咳に関与することもあります。
特に感染症のあとには、
- 鼻や喉の粘膜に炎症が残る
- 刺激に対して過敏な状態が続く
- 少量の鼻汁でも喉が刺激されやすい
といった変化が起こることがあります。
このような状態では、
「鼻の症状が中心なのに、主な訴えが咳になる」
ということも珍しくありません。
UACS(上気道咳嗽症候群)とは何か
臨床では、
鼻・副鼻腔・喉など上気道由来の刺激によって咳が出やすくなる状態を、
UACS(Upper Airway Cough Syndrome:上気道咳嗽症候群)という概念で整理することがあります。
UACSは、
- 後鼻漏
- 鼻炎
- 副鼻腔炎
- 感染後の上気道炎症
などを背景とした咳をひとまとめに考えるための臨床概念で、
単一の病名というより「咳の原因を考える枠組み」に近いものです。
後鼻漏(鼻汁が喉に回る状態)と咳
鼻水は前に出るだけでなく、
喉の奥に流れる(後鼻漏)ことがあります。
後鼻漏があると、
- 喉の違和感
- 咳払いが増える
- 会話中や就寝時に咳が出やすい
といった症状が現れやすくなります。
感染症のあと、
鼻の炎症が完全には引かず、上気道が過敏な状態になると、
この後鼻漏が咳の引き金になることがあります。
UACSと咳喘息は重なっていることがある
診療をしていると、
- 鼻の症状が目立つ
- しかし咳の出方は咳喘息に似ている
というケースに出会うことがあります。
実際には、
- 上気道の刺激(UACS的要素)
- 気管支側の過敏性(咳喘息的要素)
が同時に存在している場合も少なくありません。
そのため、
「鼻の問題」「気管支の問題」と単純に分けるのではなく、
症状や経過を総合的に整理することが重要になります。
FeNO検査が役立つ場面
咳が長引く場合、
- 感染後の影響が中心なのか
- 咳喘息の要素が関わっているのか
判断に迷うことがあります。
このような場面で、
FeNO(呼気一酸化窒素)検査が判断材料の一つとして役立つことがあります。
FeNOは、
気道に好酸球性炎症があるかどうかの目安を知るための検査で、
咳喘息の要素が疑われる場合などに参考になります。
※FeNOだけで診断が決まるわけではなく、
症状・経過・診察所見と合わせて考えることが大切です。
咳が続くときに整理したいポイント
受診時には、次のような点を整理します。
- 鼻水や喉の違和感の有無
- 咳の出やすい時間帯(夜間・早朝)
- 冷気や会話で誘発されるか
- 発熱や全身症状の経過
- これまでの治療や生活状況
必要に応じて検査を組み合わせながら、
UACS的要素か、咳喘息的要素か、あるいは両者の重なりかを考えていきます。
こんな場合は一度相談を
多くの咳は時間とともに軽快しますが、
- 数週間続いている
- 夜間の咳で眠れない
- 鼻の症状と咳が同時に続く
- 同じような咳を繰り返している
といった場合は、
一度整理することで安心につながることがあります。
まとめ
- 風邪や感染症のあと、鼻や喉が過敏になり咳が続くことがある
- UACS(上気道咳嗽症候群)は、上気道由来の咳を整理するための概念
- 後鼻漏などの鼻の症状が咳の引き金になることがある
- 咳喘息の要素が重なっているケースも少なくない
- FeNO検査は、咳の背景を考えるための判断材料の一つ
- 症状・経過・検査を総合して考えることが大切
「風邪は治ったのに咳が続く」と感じたとき、
原因を一緒に整理することで、次の見通しが立つこともあります。
気になる症状が続く場合は、無理をせずご相談ください。
水谷内科呼吸器科クリニックでは、大泉学園地域の皆さまの呼吸の健康を守るため、丁寧な診断とわかりやすい説明を心がけています。
「なかなか咳が止まらない」と感じたら、お気軽にご相談ください。
参考文献
- Braman SS. Postinfectious cough. Chest. 2006.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16428703/ - Irwin RS, et al. Diagnosis and management of cough. ACCP Guidelines.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16428713/ - Mukae H, et al. Japanese Respiratory Society guidelines for the management of cough. 2021.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33642231/ - British Thoracic Society. Clinical Statement on chronic cough in adults. 2023.
https://www.brit-thoracic.org.uk/document-library/clinical-statements/cough-in-adults/chronic-cough-in-adults/
監修
水谷内科呼吸器科クリニック
院長 松平 秀樹
略歴
- 平成 6年 東京慈恵会医科大学医学部卒業、医師国家試験合格
- 平成 6年 東京慈恵会医科大学付属病院研修医
- 平成 8年 東京慈恵会医科大学外科学講座入局
- 平成12年 癌研究会附属病院 外科
- 平成13年 東京慈恵会医科大学 呼吸器外科
- 平成21年 独立行政法人国立病院機構東京病院 呼吸器外科
- 平成22年 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 外科
- 平成30年 東京慈恵会医科大学付属病院 呼吸器外科
- 令和 4年 町田市民病院 外科(呼吸器外科担当部長)
- 令和 7年 松平小児科副院長
- 令和 7年 10月より水谷内科呼吸器科クリニック開業
資格
- 医学博士
- インフェクションコントロールドクター
- 日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医
- 日本外科学会外科 外科専門医
- 医療経営士3級
所属学会
- 日本結核・非結核性抗酸菌症学会
- 日本肺癌学会
- 日本外科感染症学会
- SIGMA Xi (Regular member)
- 日本呼吸器外科学会
- 日本外科学会
- 日本胸部外科学会