喫煙の危険性と禁煙の有用性

喫煙の危険性

タバコには有害物質が200種類以上含まれ、そのうち少なくとも70種類が発がん性物質であることが知られています。

  • がんとの関係:肺がんをはじめ、咽頭がん・膀胱がんなど多くのがんの発症リスクが喫煙者は明らかに高くなります(厚生労働省の調査では肺がん死亡率は非喫煙者の約4~5倍)。
  • 呼吸器疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)や慢性気管支炎の主な原因は喫煙です。日本国内でもCOPD患者の約9割が喫煙歴を持つといわれています。
  • 循環器疾患:心筋梗塞や脳卒中のリスクも高まり、受動喫煙によって周囲の家族も同様の危険にさらされます。

禁煙の有用性

禁煙の効果は、始めた瞬間から現れます。

短期的効果

禁煙後20分で血圧・脈拍が改善し、2週間〜3か月で肺機能が回復、呼吸が楽になります。

長期的効果

禁煙1年で心筋梗塞のリスクは半分に減少し、10年後には肺がんのリスクが喫煙者の約半分まで低下することが示されています(米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention:アメリカ疾病対策センター)、日本のコホート研究(・Inoue M, et al. “Smoking and lung cancer risk in a large-scale cohort study in Japan (JPHC study): with special reference to type of tobacco and gender.” Cancer Sci. 2005;96(5):283–289. ・Iso H, et al. “Smoking and risk of stroke and coronary heart disease in the Japan Public Health Center-based prospective study (JPHC study).” Circulation. 2006;113(22):1969–1975.)など)。

寿命延長

喫煙者が40歳までに禁煙すれば、平均寿命は非喫煙者とほぼ同等まで回復すると報告されています。

禁煙外来とは

喫煙を現在されている方で、禁煙したいと考えている方々を対象にした外来になります。
禁煙は本人の意思次第と思われている方もいるかもしれませんが、タバコに含まれるニコチンは強い依存性を持ち、アルコールや覚せい剤などと同様に“やめにくい薬物”と医学的に位置づけられています。
そのため、禁煙は意思だけでなく医学的なサポートが有効です。
禁煙治療を受けようとされる際には、まず医師が患者さまに関して問診をしていきます。
その結果、一定の条件を満たしていると医師が判断した場合は、保険適用にて禁煙治療を行うことになります。
保険適用の有無が判断される内容に関しては次の通りです。
なお条件を満たさないとなれば、保険適用外(費用は全額自己負担)とはなりますが、同様の禁煙治療を受けることはできます。

  1. ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS:Tobacco Dependence Screener)で5点以上の方(10問の質問票を用いて依存度を確認します。5点以上で依存症と判定され、保険診療が可能です)
  2. 35歳以上の方であれば、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上ある
  3. 直ちに禁煙されていることを希望している方
  4. 「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意された方

禁煙治療について

保険適用での治療の場合、12週間の治療期間の中で5回の通院を要し、主に禁煙補助薬を使用していきます。
用いられる禁煙治療薬には大きく分けて2種類あります。

1. 肌に貼るタイプ(ニコチネルTTS®

ニコチンが含まれた貼付薬で、皮膚からニコチンを吸収させることで、禁煙によるイライラや集中力低下などの禁断症状を和らげます。
タバコを吸わなくてもニコチンが体内に入るため、禁煙を継続しやすくなります。
その後は含有量の少ないパッチに切り替え、最終的に何も使わない状態を目指します。
使用時は起床時に貼り、就寝時まで続けます。
毎日同じ部位に貼ると皮膚がかぶれることがあるため、貼る位置をずらす工夫が必要です。

飲み薬タイプ(禁煙補助薬:バレニクリン®

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禁煙治療の流れ

先でも少し触れましたが、保険診療による禁煙治療は12週間の間に渡って行われることが決められており、その間に5回の通院が必要とされています。
なお13週目以降も禁煙治療を要するという場合は、以降の費用については保険適用外、つまり全額自己負担となります。

5回の通院時期というのは、まず初診から始まり、その2週間後、4週間後、8週間後、12週間後の間隔で受診しますが。
当クリニックの禁煙外来では、厚生労働省の定める『禁煙治療のための標準手順書』に沿って、12週間・5回の通院で計画的に禁煙をサポートします。
そのときの受診内容というのは、主に次のようなものです。

  1. 初診(初めて禁煙治療を受ける)
    まず禁煙治療を受けるにあたって保険適用が可能かどうかの問診を医師が行っていきます。
    さらに禁煙日のスタート日時を決定し、禁煙誓約書に署名が必要となります。 このほか、呼気中の一酸化炭素濃度の測定をしていき、医師から禁煙のアドバイスを受けたり、禁煙補助薬(ニコチンパッチ)が処方されたりします。
  2. 初診から2週間後の通院(2回目)
    禁煙治療を開始してからの身体の様子などを医師が聞くなどの問診が行われます。
    そのほか、呼気中(息を吐き出す際)の一酸化炭素濃度を測定したり、禁煙を続けるにあたってのアドバイスなどを医師から受けたりしていきます。 また禁煙補助薬の追加の処方も受けます。
  3. 初診から4週間後(3回目)と8週間後(4回目)の通院
    3回目の通院は初診から4週間後、4回目は初診から8週間後になります。
    診療内容は2回目と同様で、禁断症状の有無などを医師が患者さまに聞く問診などの診察をしていきます。
    使用するニコチンパッチですが、禁煙開始からの4週間、次の2週間、さらに次の2週間とニコチンの含有量が徐々に少なくなったパッチを貼っていきます。 禁煙開始後の9週間目からは何も貼らなくなります。
  4. 初診から12週間後(5回目)の通院
    保険適用の禁煙治療では最後の通院となります。
    これまでと同じく、呼気中の一酸化炭素濃度の測定をはじめ、禁煙に関するアドバイスを医師から受けます。
    そして医師より禁煙治療はもう必要ないといわれると同治療は終えることになります。
    ちなみに13週目以降も治療を要すると医師が判断した場合は、治療の継続も可能です。 ただし、治療にかかる費用については保険適用外なので、全額自己負担です。