- 2026年7月14日
【2026年6月改定】CPAP治療の保険適用基準が緩和されました──「以前は対象外」と言われた方も、もう一度ご相談ください
いびきや日中の強い眠気の原因となる睡眠時無呼吸症候群(SAS)。その代表的な治療がCPAP(シーパップ/持続陽圧呼吸療法)です。
このCPAP治療について、2026年(令和8年)6月の診療報酬改定で保険が適用される基準が引き下げ(緩和)されました。これまで「保険での治療の対象外」と説明されていた方の一部が、新たに対象になり得ます。
「前に検査を受けたけれど、あと少しで治療の対象にならなかった」——そんな方も、この機会に一度ご相談いただけます。この記事では、SASとCPAP治療の基本、そして今回の制度変更を、厚生労働省の告示・通知など一次情報に基づいてご説明します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは──「いびき」の陰に隠れる病気
厚生労働省 e-ヘルスネットによると、SASは眠っている間にくり返し呼吸が止まってしまう病気です。呼吸が止まると血液中の酸素が減り、そのたびに脳が短く目を覚まして呼吸を再開します。これを一晩じゅう繰り返すため、深い睡眠がとれず、日中に強い眠気が出ます。
さらに、酸素不足を補おうとして心臓や血管に負担がかかり、高血圧や動脈硬化が進みやすくなります。中等症・重症のSASを放置すると、心筋梗塞・脳梗塞などのリスクが高まることが知られています。
こんなサインがある方はご注意ください
日本呼吸器学会のガイドライン(2020)では、次のような症状がSASを疑うきっかけになるとされています。
- 家族から、習慣的な大きないびきを指摘されたことがある
- 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘されたことがある
- 息苦しさ・窒息感で目が覚めることがある
- 会議中や運転中など、日中に強い眠気に襲われる
- 起床時の頭痛や、眠っても疲れが取れない感覚がある
- 高血圧・2型糖尿病・不整脈(心房細動)などをお持ちである
SASの重症度は、AHI(無呼吸低呼吸指数=睡眠1時間あたりに呼吸が止まる・浅くなる回数)で評価します。AHI 5〜15未満が軽症、15〜30未満が中等症、30以上が重症です。
CPAP(持続陽圧呼吸療法)とは
CPAPは、鼻に装着したマスクから一定の圧力の空気を送り込み、ふさがりやすい気道を内側から支えて開いた状態に保つ治療法です。中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸に対する標準的な治療の一つとされ、一定の基準を満たす場合には公的医療保険が適用されます。
国際的にみたSASとCPAP治療
睡眠時無呼吸は、世界的にも非常に多い病気です。国際的な推計では、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に該当する状態の成人は世界で約10億人にのぼるとされています(Benjafield ら、Lancet Respiratory Medicine 2019)。
米国睡眠医学会(AASM)の診療ガイドラインでは、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸に対して、CPAPが標準的な治療の一つとして推奨されています(Patil ら、2019)。診断のための検査の使い分けについても、国際的な基準が示されています(Kapur ら、2017)。
また、治療を受けていない重症のSASでは、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントが起こりやすいことが、長期の観察研究で報告されています(Marin ら、Lancet 2005)。国内外のエビデンスからも、SASは「気づいて・調べて・必要なら治療する」ことが大切な病気だといえます。
【本題】2026年6月改定で、何がどう変わったのか
CPAP治療を保険で行う枠組みは、診療報酬の「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」で定められています。2026年6月の改定で、閉塞性睡眠時無呼吸のAHIの基準が次のように引き下げられました。
🔎 ここがポイント ─ 対象が広がりました
精密検査(PSG)でのAHI:20以上 → 15以上
簡易検査でのAHI(自覚症状が強い場合):40以上 → 30以上
※AHIの基準は、簡易検査(自宅の簡易PSG)と精密検査(PSG)で異なります。
これまではAHIが20以上でなければ対象になりにくかったところ、改定後はAHIが15以上であれば要件を満たせば対象に。日中の強い眠気などの自覚症状が強い方は、AHIが30以上で対象となる道が開かれました。これまで基準にわずかに届かず「対象外」とされていた軽症〜中等症の方の一部が、新たに保険治療の対象になり得ます。
【確度について】上記のAHI基準(20→15、40→30)と2026年6月の施行は、厚生労働省の令和8年度診療報酬改定の告示・通知で確認できる確定情報です。ただし、実際に保険治療の対象になるかは、AHIの数値だけでなく、自覚症状や検査所見など複数の要件を総合して医師が判断します。
「以前、対象外と言われた」方へ
SASの検査は受けたものの、当時の基準では治療の対象にならなかった、という方は少なくありません。今回の基準見直しにより、同じ検査結果でも判断が変わる可能性があります。
- 以前、検査を受けて「経過観察」となった方
- いびきや眠気が続いているが、治療にはつながっていない方
- 数年前に検査を受けたきりで、その後の状態を確認できていない方
このような方は、あらためて現在の状態を評価することをおすすめします。
検査の進め方 ─ まずは簡易PSGから
SASの検査は、ご自宅でできる「簡易PSG」から始め、必要に応じて「精密PSG」に進みます。2つの検査は、目的と詳しさが異なります。
① 簡易PSG(Polysomnography/簡易睡眠ポリグラフ検査)
ご自宅で、指や鼻に小型のセンサーを付けて一晩眠るだけの検査です。呼吸の止まり・血中の酸素・いびきなどを記録し、簡易検査でのAHIから、まずSASの可能性と大まかな重症度を調べます。手軽な「最初の一歩」の検査です。
② 精密PSG(Polysomnography/終夜睡眠ポリグラフ検査)
脳波・呼吸・心拍・体の動き・睡眠の深さなど、より多くの項目を詳しく記録し、精密検査でのAHIを正確に測る検査です。簡易PSGだけでは判断が難しい場合に、正確な重症度や睡眠の質を評価します。
簡易PSGの結果が「こんなとき」は精密PSGへ
簡易PSGでは、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)を大まかに把握します。その結果によって、次のように進みます。AHIの基準は簡易検査と精密検査(PSG)で異なる点にご注意ください。
🔎 進め方のめやす
ケース1:簡易検査(簡易PSG)でのAHIが30以上 あり、日中の強い眠気などの症状がそろっている場合は、精密検査を行わずに、そのまま CPAP治療を開始 できます。
ケース2:簡易検査でのAHIが30に届かない、または症状が強いのに簡易検査でははっきりしない場合は、精密PSG でくわしく調べ、精密検査(PSG)でのAHIが15以上 であればCPAP治療の対象になります。
次のような場合も、精密PSGをおすすめします。
- 症状は強いのに、簡易PSGでは無呼吸がはっきり出ない・判定できない・うまく記録できなかったとき(※日本呼吸器学会・米国睡眠医学会(AASM)も、簡易検査が陰性・判定不能・技術的に不十分な場合は精密PSGを行うことをすすめています)
- 心臓や肺などの持病があり、より詳しい評価が望ましいとき
📋 なぜ、まず簡易検査から?(保険診療の考え方)
睡眠時無呼吸の検査は、保険診療では段階的に進めるのが基本です。まずご自宅でできる簡易PSGで睡眠中の呼吸を確認し、簡易検査だけでは診断がはっきりしない・確定できない場合や、より詳しい評価が必要な場合に精密PSGへ進みます。
特に、入院などで行う最も精密な「安全精度管理下」の終夜睡眠ポリグラフ検査は、保険診療の算定要件で、心疾患・脳血管障害・呼吸器疾患・高度肥満(BMI35以上)などの合併症がある方などに対象が限られています。こうした合併症のない一般的なSASでは、まず簡易検査から始めるのが原則です。
💡 なぜ簡易検査だけで終わらないの? 簡易PSGは脳波を測らないため、実際に眠っていた時間ではなく「記録した時間」をもとにAHIを計算します。そのため本当の重症度より軽く出る(AHIを低めに見積もる)ことがあり、必要に応じて精密PSGで確認します。
🏠 当院なら、どちらの検査もご自宅で
当院では、簡易PSGも精密PSGも、ご自宅で受けていただけます。精密PSGは、ご受診後に検査機器をご自宅へ郵送し、ご自宅で装着して検査していただけます(入院は不要です)。
📞 簡易PSGをご希望の方は、事前にお電話ください。
これらの検査でAHIなどを確認し、症状もあわせて総合的に判断したうえで、CPAPなどの治療が適応となるかを決めていきます。
当院の診療体制
当院は呼吸器内科・アレルギー科を中心に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療にも対応しています。呼吸器内科は気道・肺を専門とする診療科であり、上気道の閉塞が関わるSASと親和性の高い領域です。
まとめ
- SASは、いびきや日中の眠気だけでなく、高血圧・心筋梗塞・脳梗塞のリスクにも関わります。
- 2026年6月の改定で、CPAP治療の保険適用のAHI基準が引き下げられました(20→15、40→30)。
- これまで「対象外」とされていた方の一部が、新たに保険治療の対象になり得ます。
- 当院では簡易PSGも精密PSGもご自宅で受けられます。対象になるかは検査結果と症状をあわせて医師が判断します。
「たかがいびき」「年齢のせい」と見過ごさず、気になる症状のある方はお気軽にご相談ください。
ご予約・お問い合わせ
簡易PSGをご希望の場合は、事前のお電話をお願いします。ご予約・ご相談もお電話で承っております。
📍 練馬区東大泉6-51-4 TKマンション1F(大泉学園駅南口から徒歩4分)
🗓 休診:木曜・日曜・祝日
松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック
〒178-0063 東京都練馬区東大泉6丁目51-4 TKマンション1F
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※ 本記事は医療・健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療を保証するものではありません。保険適用の可否や治療方針は、検査結果と症状に基づき医師が個別に判断します。記載内容は執筆時点(2026年7月)の情報に基づいています。
監修
松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック
院長 松平 秀樹
略歴
- 平成 6年 東京慈恵会医科大学医学部卒業、医師国家試験合格
- 平成 6年 東京慈恵会医科大学付属病院研修医
- 平成 8年 東京慈恵会医科大学外科学講座入局
- 平成12年 癌研究会附属病院 外科
- 平成13年 東京慈恵会医科大学 呼吸器外科
- 平成21年 独立行政法人国立病院機構東京病院 呼吸器外科
- 平成22年 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 外科
- 平成30年 東京慈恵会医科大学付属病院 呼吸器外科
- 令和 4年 町田市民病院 外科(呼吸器外科担当部長)
- 令和 7年 松平小児科副院長
- 令和 7年 10月より水谷内科呼吸器科クリニック開業
- 令和 8年 4月よりクリニック名変更(松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック)
資格
- 医学博士
- インフェクションコントロールドクター
- 日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医
- 日本外科学会 外科専門医
- 医療経営士3級
所属学会
- 日本結核・非結核性抗酸菌症学会
- 日本肺癌学会
- 日本外科感染症学会
- 日本呼吸器外科学会
- 日本外科学会
- 日本胸部外科学会
参考情報・出典
【制度(保険適用基準)】
【診療ガイドライン・公的情報】
- 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」 日本呼吸器学会
- 日本呼吸器学会(市民向け)「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」 日本呼吸器学会
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」 e-ヘルスネット
【国際的なガイドライン・研究論文】
- Benjafield AV, et al. Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis. Lancet Respiratory Medicine. 2019;7(8):687-698. PubMed
- Patil SP, et al. Treatment of Adult Obstructive Sleep Apnea With Positive Airway Pressure: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2019;15(2):335-343. PubMed
- Kapur VK, et al. Clinical Practice Guideline for Diagnostic Testing for Adult Obstructive Sleep Apnea: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2017;13(3):479-504. PubMed
- Marin JM, et al. Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study. Lancet. 2005;365(9464):1046-1053. The Lancet
この記事は医療広告ガイドライン(厚生労働省)を遵守して作成されています。掲載内容は一般的な医学的情報であり、個別の診断・治療を示すものではありません。症状がある場合は医師にご相談ください。