- 2026年8月14日
喉の痛みと咳、両方続いていませんか──喉から肺までをつないで診る呼吸器の視点
呼吸器内科コラム
喉の痛みと咳、両方続いていませんか──喉から肺までをつないで診る呼吸器の視点
こんにちは。練馬区大泉学園の呼吸器内科・アレルギー科クリニック、院長の松平です。
「喉が痛くて、咳も出る」──このふたつが同時に、あるいは前後して起こることは珍しくありません。多くの方は「喉が痛いなら耳鼻科」と考えますが、実はこの組み合わせには呼吸器の視点が役立つことが少なくありません。今は咳がなく喉の痛みだけという方にも、原因によっては呼吸器内科・アレルギー科での評価が参考になることがあります。今回は、喉の痛みと咳がなぜ関連するのか、そのメカニズムと、症状のパターンから考えられることを呼吸器外科専門医の立場からお伝えします。
この記事でわかること
- 喉の痛みと咳が同時に起こりやすい理由(呼吸の通り道はひとつながり)
- 咳を伴う喉の痛みの主な原因と、症状パターンごとの見分け方
- 後鼻漏・咽喉頭酸逆流など「喉だけ」では説明できない原因
- 受診の目安と、命に関わる緊急のサイン
- 当院で行う検査と治療の考え方
1喉の痛みと咳、実は同じ通り道の炎症かもしれません
鼻の奥から喉、気管、気管支、そして肺まで──私たちの体には、空気の通り道がひとつながりになっています。この「呼吸の通り道」の粘膜には、刺激を感じ取って咳を引き起こす神経の末端が、喉にも肺の奥にも数多く分布しています。この神経には、刺激やわずかな動きに反応するタイプと、化学的な刺激や炎症物質に反応するタイプがあり、いずれも喉から脳(延髄)へ信号を送って咳という反応を起こします。
つまり、喉に強い炎症や刺激があるとき、その信号は「痛み」だけでなく「咳」としても現れることがあります。喉の痛みと咳が同時に、あるいは前後して起こりやすいのは、偶然ではなく、この呼吸の通り道が一本につながっているためです。
2咳を伴う喉の痛みの主な原因──症状のパターンで考える
同じ「喉の痛み+咳」でも、原因によって症状の出方には特徴があります。ご自身の症状と照らし合わせながら読んでみてください。
急性気管支炎
風邪のあとに、痰がらみの咳が数日〜1週間ほど続き、咳き込みが強いために喉自体もヒリヒリと痛む、というパターンです。これは気管支の炎症そのものよりも、咳き込みを繰り返すことで喉の粘膜が物理的に刺激され続けることが痛みの一因と考えられています。発熱を伴うこともありますが、多くは1〜2週間程度で自然に軽快します。
咳喘息
日中はほとんど症状がないのに、夜間や明け方に乾いた咳が強くなる、というパターンが特徴的です。これは、気管支の収縮しやすさが、自律神経の1日のリズム(夜間に副交感神経が優位になる)の影響を受けて、夜間・早朝に高まりやすいためと考えられています。痰はあまり絡まず、乾いた咳が続くことで喉が痛くなる、という順番になることが多いです。
後鼻漏(上気道咳嗽症候群)
「横になると咳や喉の違和感が増す」「喉の奥に何かが流れ落ちてくる感じがする」という方は、このタイプが関係している可能性があります。鼻や副鼻腔からの分泌物が喉の奥へ流れ込み、喉にある咳の神経を直接刺激するために咳が誘発されます。横になると分泌物が重力で喉に溜まりやすくなるため、就寝中や起床時に症状が強く出やすいのが特徴です。喉の痛みというより「イガイガ感」「詰まった感じ」として自覚されることも多くあります。
咽喉頭酸逆流(LPR、GERDの一種)
「朝起きたときに声がかすれている」「喉のイガイガ感が1日中続く」「食後や横になった後に咳や喉の違和感が悪化する」という方は、このパターンが考えられます。就寝中は重力による逆流の防御が働きにくくなるため、胃酸が喉元まで上がってきやすくなります。胃酸が直接喉の粘膜を刺激することに加え、逆流そのものが喉まで届かなくても、食道と喉をつなぐ神経の反射を介して咳が誘発されることが分かっています。「胸焼けはない」という方でも、この機序で喉の症状・咳が出ることがあります。
扁桃炎
喉の強い痛みと38℃以上の発熱が中心で、咳はあってもそれほど目立たない、というパターンです。これまでの原因と異なり、扁桃という限られた部位の細菌・ウイルス感染が主体のため、呼吸の通り道全体への刺激よりも局所の強い痛みが前面に出るのが特徴です。
3なぜ呼吸器の視点が役立つのか
上記のように、咳を引き起こす喉の炎症には、大きく2つのパターンがあります。1つは、鼻からの分泌物が喉の奥へ流れ込み、そこにある咳の神経を刺激するタイプ(後鼻漏)。もう1つは、胃酸が喉元まで逆流し、粘膜を直接刺激したり、食道と喉をつなぐ神経の反射を介して咳を誘発したりするタイプ(咽喉頭酸逆流)です。どちらも「喉だけ」を診るのではなく、鼻・喉・食道・気管支をひとつながりの通り道として捉える必要があり、これが喉から肺までをつないで診る呼吸器の視点が役立つ理由です。
喉の痛みが中心で咳がまだ目立たない方でも、後鼻漏やアレルギー、逆流性食道炎といった要因が関わっていることがあります。喉の痛みでお困りの際は、当院のような呼吸器の視点からの評価もご相談いただけます。扁桃や鼻そのものの症状が中心の場合は、そちらの専門的な診療が適切なこともあります。
なお、上記の症状パターンはあくまで「このような症状の組み合わせがある場合に、それぞれの原因が関係している可能性がある」という目安であり、症状だけで確定診断ができるものではありません。実際の診断には、経過や身体診察、必要に応じた検査が欠かせません。
4こんな症状があれば受診のサインです
喉の痛みに加えて2週間以上咳が続く場合は、一度ご相談ください(学会の基準では3週間以上を「遷延性咳嗽」としていますが、当院では少し早めの段階でのご相談をお勧めしています)。
また、期間に関わらず、次のような症状がある場合は早めの受診をお勧めします。
- 血の混じった痰(血痰)が出る
- 息切れ・呼吸困難を伴う
- 38℃以上の高熱が3日以上続く
- 急激な体重減少がある
- 胸の痛みを伴う咳
- 声のかすれ(嗄声)が続く
喫煙歴がある方、50歳以上で咳が続く方は、特にご注意ください。
唾液が飲み込めないほどの強い喉の痛み、呼吸が苦しい、声がこもって聞き取りにくい──これらは扁桃周囲膿瘍や急性喉頭蓋炎など、喉の奥が急激にふさがって呼吸ができなくなる、緊急性の高い病態のサインである可能性があります。
5当院でできる検査
原因を見極めるために、以下のような検査を行うことがあります。
胸部レントゲン
肺炎・気管支炎など、肺そのものの病変がないかを確認します。
View39などのアレルギー検査
アレルギー性の関与(アトピー咳嗽など)が疑われる場合に行います。
喀痰検査
痰の性状から感染の有無や種類を確認することがあります。
問診・聴診とあわせて、これらの検査結果を総合的に見ることで、原因の絞り込みを行います。
6治療は原因によって異なります
上記のとおり、喉の痛みと咳の原因はひとつではありません。原因を見極めたうえで、それぞれに合った治療を行います。
7経過が長引く場合は再診での精査を
初診でお薬を使っても症状の改善が乏しい場合、慢性咳嗽として追加の検査や経過観察が必要になることがあります。長引く咳は一度の受診だけで原因が確定しないことも多いため、経過を見ながら一緒に原因を探っていくことが大切です。
8まとめ
- 喉の痛みと咳は、ひとつながりの呼吸の通り道でつながっている
- 「横になると悪化」「朝の声がれ」「夜間・早朝の空咳」など、症状の出方には原因ごとの特徴がある
- 2週間以上続く場合、また血痰・呼吸困難・高熱・体重減少・胸痛・嗄声がある場合は早めの受診を
- 唾液が飲み込めない・呼吸が苦しい・声がこもる場合は、ただちに救急受診を
- 当院では胸部レントゲンやアレルギー検査などで原因を確認しながら診療します
喉の痛みでお困りの方も、まずはお気軽にご相談ください。
監修
松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック 院長 松平 秀樹
- 平成6年 東京慈恵会医科大学医学部卒業、医師国家試験合格
- 平成6年 東京慈恵会医科大学付属病院 研修医
- 平成8年 東京慈恵会医科大学 外科学講座入局
- 平成12年 癌研究会附属病院 外科
- 平成13年 東京慈恵会医科大学 呼吸器外科
- 平成21年 独立行政法人国立病院機構東京病院 呼吸器外科
- 平成22年 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 外科
- 平成30年 東京慈恵会医科大学付属病院 呼吸器外科
- 令和4年 町田市民病院 外科(呼吸器外科担当部長)
- 令和7年 松平小児科 副院長
- 令和7年 水谷内科呼吸器科クリニック 開業
- 令和8年 松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック(クリニック名変更)
資格:医学博士/インフェクションコントロールドクター/日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医/日本外科学会 外科専門医
場所:練馬区東大泉6-51-4 TKマンション1F(大泉学園駅南口から徒歩4分)
電話:03-3867-8141
休診:木曜・土曜午後・日曜・祝日
参考文献
- Canning BJ, et al. Anatomy and Neurophysiology of Cough. CHEST(ACCP Evidence-Based Clinical Practice Guidelines)
- Pratter MR. Chronic Upper Airway Cough Syndrome Secondary to Rhinosinus Diseases. CHEST(ACCP Evidence-Based Clinical Practice Guidelines), 2006
- Laryngopharyngeal Reflux. StatPearls, NCBI Bookshelf
- Laryngopharyngeal Reflux Pathophysiology, Clinical Presentation, and Management: A Narrative Review. PMC, 2024
- 日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」
- 急性喉頭蓋炎とは|済生会
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。症状についての判断は必ず医療機関にご相談ください。本記事は医療広告ガイドライン(厚生労働省)を遵守して作成されています。