- 2026年6月9日
咳喘息・気管支喘息の診断を助ける「呼吸一酸化窒素検査(FeNO)」とは|松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック

「咳が2週間以上続いている」「市販の咳止めを飲んでも一向に改善しない」「喘息と言われたが、本当にそうなのか確信が持てない」——こうしたお悩みを持って受診される方は少なくありません。
当院では、長引く咳の原因評価や喘息の診断・治療効果の確認において、呼吸一酸化窒素検査(FeNO:Fractional exhaled Nitric Oxide)を活用しています。本記事では、FeNO検査でわかること・わからないこと、検査の流れ、どんな方に役立つ可能性があるかについて、ガイドラインとエビデンスに基づいてわかりやすく解説します。
咳が2週間以上続いている/咳喘息・喘息を以前に指摘された/吸入薬を使っているが効いているか実感がわからない/夜〜早朝に咳がひどくなる
目次
- 呼吸一酸化窒素(NO)とは何か
- FeNO検査でわかること
- FeNO検査の実際の流れ
- FeNO値の目安と解釈
- どんな場面でFeNO検査が役立つか
- FeNO検査の「限界」も知っておきましょう
- 当院での咳・喘息診療の流れ
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
1. 呼吸一酸化窒素(NO)とは何か
一酸化窒素(NO)は、体内でさまざまな細胞が産生するシグナル分子のひとつです。気道においては、好酸球性の炎症(アレルギー性炎症)があるときに、気道粘膜の上皮細胞から産生量が増加することが知られています。
呼気中のNO濃度(FeNO)を計測することで、気道に好酸球性炎症が起きているかどうかを、採血や気管支鏡を使わずに評価できます。
Dweik RA, et al.(ATS Clinical Practice Guideline, AJRCCM 2011)は、FeNOが気道の好酸球性炎症の非侵襲的マーカーとして有用であるとし、喘息の診断補助・治療モニタリングへの応用を推奨しています。日本呼吸器学会「喘息予防・管理ガイドライン2021」でも、FeNOは気道炎症のバイオマーカーとして臨床的に有用とされています。
2. FeNO検査でわかること
FeNO検査が主に役立つ場面は以下の2つです。
① 好酸球性気道炎症の有無の評価
喘息や咳喘息では、気道に好酸球性炎症が存在していることが多く、FeNOが上昇する傾向があります。長引く咳の原因が「アレルギー・好酸球性の炎症によるものかどうか」を判断する手がかりになります。
② 吸入ステロイド薬(ICS)の治療効果のモニタリング
喘息治療中の方では、吸入ステロイド薬が適切に効いている場合にFeNO値が低下することが多く、治療が十分かどうかの目安になることがあります。ただし、値の変化だけで治療を決定するものではなく、症状・肺機能などと合わせて総合的に評価します。
3. FeNO検査の実際の流れ
検査は痛みなく、数分で終わります。
- 専用の検査機器のマウスピースをくわえる
- 一定の速度(約6L/分)でゆっくりと息を吐き続ける(約10秒間)
- 呼気中のNO濃度(ppb単位)が自動で表示される
検査前の飲食・激しい運動・喫煙はFeNO値に影響を与えることがあるため、可能な範囲で避けていただくようお願いしています。
NIOX®は、FeNO測定機器の中で唯一、ATS(米国胸部疾患学会)・ERS(欧州呼吸器学会)のガイドラインに準拠していることが確認された機器であり、世界中の臨床研究で標準的に使用されてきた実績があります。喘息・FeNOに関する医学論文で引用されているFeNO測定機器は、事実上NIOX®が中心であり、現在の喘息診療ガイドラインのエビデンスはNIOX®を用いた研究によって構築されています。
日本においても、NIOX®は薬事承認を取得した機器として普及しており、信頼性の高い測定が可能です。
4. FeNO値の目安と解釈
| FeNO値(ppb) | 意味・解釈 |
|---|---|
| 25未満 | 好酸球性気道炎症の可能性は低い。喘息以外の原因を考慮。 |
| 25〜50 | 中等度の炎症。症状・病歴・他の検査と合わせて総合的に判断。 |
| 50超 | 気道炎症が強い。好酸球性喘息の可能性が高く、吸入ステロイドが有効なことが多い。 |
この数値はあくまで「目安」です。FeNO値が高い=必ず喘息、低い=喘息ではない、ということにはなりません。症状・問診・呼吸機能検査・胸部レントゲンなどと合わせて、医師が総合的に判断します。喫煙者・アトピー素因のない方・気道感染直後などでは、値の解釈が異なる場合があります。
5. どんな場面でFeNO検査が役立つか
🔍 長引く咳の原因評価
咳が2週間以上続く場合、原因は喘息・咳喘息、後鼻漏(UACS)、胃食道逆流(GERD)、感染後遷延など多岐にわたります。FeNOが高値であれば、好酸球性炎症(喘息・咳喘息)の関与を考えるきっかけになります。
💊 吸入ステロイドの治療効果確認
「吸入薬をきちんと使っているが症状が変わらない」という場合、FeNOのモニタリングが治療方針の見直しに役立つことがあります。
🌿 アレルギー素因の評価の補助
FeNO高値はアトピー素因との関連が報告されており、アレルギー検査と合わせた評価に活用できます。
👶 お子さんの咳・喘息の評価
5〜6歳以上で検査方法を理解できるお子さんであれば実施可能です。小児喘息の診断・治療モニタリングにも活用されています。
6. FeNO検査の「限界」も知っておきましょう
- FeNOは喘息の「確定診断」検査ではありません。呼吸機能検査(スパイロメトリー)や気道可逆性試験と組み合わせて判断します。
- 非好酸球性喘息(好中球性など)ではFeNOが正常〜低値のことがあります。FeNOが正常でも喘息が否定されるわけではありません。
- COPD・喫煙者・肺炎回復後では、喘息とは異なるメカニズムで値が変動することがあります。
7. 当院での咳・喘息診療の流れ
- 詳しい問診:咳の期間・性状・悪化するタイミング・アレルギー歴・薬歴・喫煙歴など
- 身体診察:聴診による気道音の確認
- 胸部レントゲン検査(必要に応じて):肺炎・肺の器質的疾患の除外
- FeNO検査:気道の好酸球性炎症の評価
- 呼吸機能検査(スパイロメトリー)(必要に応じて):気流制限・可逆性の確認
- アレルギー検査(必要に応じて):血中IgE・特異的IgEなど
これらを組み合わせることで、初診当日から可能な範囲で診断評価を進め、治療方針をご一緒に考えることができます。
8. よくある質問(FAQ)
Q. FeNO検査は保険適用ですか?
喘息の診断・管理を目的として医師が必要と判断した場合、保険診療として実施されます(D099 呼吸ガス分析)。詳細は受診時にご確認ください。
Q. 子どもでも受けられますか?
一般的に5〜6歳以上で息の吐き方を理解できるお子さんであれば実施可能とされています。当院では年齢・状況に応じてご案内しています。
Q. 検査当日に吸入薬は使ってもいいですか?
吸入ステロイドの長期使用はFeNO値を低下させることがあります。すでに吸入薬を使用中の方は、受診時にその旨をお知らせください。
Q. FeNOが高かったらどうなりますか?
症状・他の検査結果と合わせて医師が総合的に判断します。FeNOの値だけで治療を開始するわけではなく、必要に応じて診断的治療(治療を試みて反応を確認する方法)を行うことがあります。
Q. 検査にかかる時間はどれくらいですか?
検査自体は約10秒間の呼気のみです。結果は即時表示されますので、診察の中でスムーズに結果をご説明できます。
9. まとめ
- FeNO(呼吸一酸化窒素検査)は、気道の好酸球性炎症を非侵襲的に評価できる補助検査
- 長引く咳の原因評価、喘息診断の補助、治療効果のモニタリングに役立つことがある
- FeNO単独で診断・治療が決まるわけではなく、問診・胸部レントゲン・呼吸機能検査と組み合わせた総合的な判断が重要
- 検査は数分・痛みなく、初診当日から実施できる
- 当院では、医学論文・ガイドラインの標準機器として世界的に使用されているNIOX VERO®を使用しています
咳が2週間以上続く方、喘息の管理が気になる方は、お気軽に当院へご相談ください。
※ 本記事は医療・健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療を保証するものではありません。症状や治療方針については、必ず担当医師にご相談ください。記載内容は執筆時点(2026年6月)の情報に基づいています。
監修
松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック
院長 松平 秀樹
略歴
- 平成 6年 東京慈恵会医科大学医学部卒業、医師国家試験合格
- 平成 6年 東京慈恵会医科大学付属病院研修医
- 平成 8年 東京慈恵会医科大学外科学講座入局
- 平成12年 癌研究会附属病院 外科
- 平成13年 東京慈恵会医科大学 呼吸器外科
- 平成21年 独立行政法人国立病院機構東京病院 呼吸器外科
- 平成22年 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 外科
- 平成30年 東京慈恵会医科大学付属病院 呼吸器外科
- 令和 4年 町田市民病院 外科(呼吸器外科担当部長)
- 令和 7年 松平小児科副院長
- 令和 7年 10月より水谷内科呼吸器科クリニック開業
- 令和 8年 4月よりクリニック名変更(松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック)
資格
- 医学博士
- インフェクションコントロールドクター
- 日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医
- 日本外科学会外科 外科専門医
- 医療経営士3級
所属学会
- 日本結核・非結核性抗酸菌症学会
- 日本肺癌学会
- 日本外科感染症学会
- SIGMA Xi (Regular member)
- 日本呼吸器外科学会
- 日本外科学会
- 日本胸部外科学会
参考文献・ガイドライン
- 日本呼吸器学会. 喘息予防・管理ガイドライン2021.
- Dweik RA, et al. An official ATS clinical practice guideline: interpretation of exhaled nitric oxide levels (FeNO) for clinical applications. Am J Respir Crit Care Med. 2011;184(5):602-615.
- 日本呼吸器学会. 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版. 2025.
- Global Initiative for Asthma (GINA). Global Strategy for Asthma Management and Prevention. 2024.
- NIOX® 公式サイト: ATS/ERSガイドライン準拠について https://www.niox.com/en/guidelines-recommendations/feno-guidelines/