- 2026年8月8日
「陽性」の中身まで見る——View39の先にある「アレルゲンコンポーネント診断」とは
View39シリーズ・コンポーネント診断 総論編
「陽性」の中身まで見る——View39の先にある「アレルゲンコンポーネント診断」とは
View39は、1回の採血で39種類のアレルゲンに対する反応をまとめて調べられる、たいへん便利なスクリーニング検査です。しかし、この検査で「陽性」と出たとき、患者さんから「これで結局、何に気をつければいいのですか」「症状はどのくらい強く出るのでしょうか」といったご質問をいただくことがあります。
実は、View39のような検査の「陽性」という結果の中には、性質の異なるいくつものタンパク質への反応が混ざっていることがあります。今回は、その中身をもう一歩読み解く「アレルゲンコンポーネント診断」という考え方を、一次情報(学会の解説・診療ガイドライン)に基づいてご説明します。
この記事でわかること
- View39が調べているのは「粗抗原」というタンパク質の集合体であること
- 「アレルゲンコンポーネント」とは何か——粗抗原との違い
- コンポーネントまで調べる意味がある、代表的な3つの場面
- コンポーネント診断にも限界があるという大切な注意点
- 当院でできること(概要)
- 今後の予定
1View39が調べているのは「粗抗原」というタンパク質の集合体
View39のような一般的なアレルギー血液検査は、花粉や食物といったアレルゲンを「まるごと」抽出したもの(これを粗抗原(そこうげん)と呼びます)に対する反応を調べています。たとえば「ピーナッツ」という粗抗原の中には、実は性質の異なる複数のタンパク質が混ざって含まれています。
粗抗原の検査は、幅広いアレルゲンの中から「原因の可能性があるもの」を効率よく絞り込むうえでとても有用です。一方で、一般社団法人日本アレルギー学会の解説によれば、粗抗原に対する反応だけを見ていたのでは、症状の背景にある詳しい事情までは分からないことがあるとされています。
2「アレルゲンコンポーネント」とは何か
粗抗原の中に混ざっている、個々のタンパク質そのものを指して「アレルゲンコンポーネント」と呼びます。そして、粗抗原全体ではなく、特定のコンポーネントに対する抗体(IgE)だけを狙って測定する検査を「アレルゲンコンポーネント特異的IgE検査」と呼びます。
「特殊な検査」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、実はコンポーネント特異的IgE検査の一部は、すでに日常のアレルギー診療に取り入れられています。日本アレルギー学会の解説では、卵白(オボムコイド)、小麦(ω-5グリアジン)、ピーナッツ(Ara h 2)、ラテックス(Hev b 6.02)などの単独コンポーネント検査が、すでに臨床現場で活用されていると紹介されています。当院が検査を依頼している検査機関(LSIメディエンス)の項目一覧でも、これらは通常の採血検査の一項目として案内されています。
3コンポーネントまで調べる意味がある、代表的な3つの場面
なぜ、粗抗原の検査だけでなく、コンポーネントまで調べることに意味があるのでしょうか。代表的な場面を3つご紹介します。詳しい内容は、それぞれ今後の記事で個別にご説明していく予定です。
(1) 症状の重さの見通しに関わる場合
同じ「陽性」でも、反応しているコンポーネントの種類によって、症状の重さの傾向が異なることが報告されています。たとえばピーナッツでは、Ara h 2というコンポーネントへの反応が、症状の誘発リスクと関連が強いことが報告されています。
(2) 花粉との「交差反応」を整理したい場合
花粉症の方が、花粉と構造の似た果物・野菜・大豆などで口の症状を起こす「花粉食物アレルギー症候群(PFAS)」については、先の記事でもご説明しました。このPFASの理解を深めるうえでも、コンポーネントという考え方が役立ちます。次回、PFASとコンポーネントの関係を詳しく取り上げる予定です。
(3) 加熱で食べられるかどうかの目安にしたい場合
卵のオボムコイドのように、熱に強い・弱いといった性質の違いが分かっているコンポーネントもあります。「加熱すれば食べられることが多い」といった生活上の目安を考えるうえでの手がかりになることがあります。
- View39などの検査は「粗抗原」という、複数のタンパク質が混ざったものへの反応を見ています
- 「アレルゲンコンポーネント」は、その中に含まれる個々のタンパク質そのものを指します
- 卵白・小麦・ピーナッツ・ラテックスなど、一部のコンポーネント検査はすでに日常診療に浸透しています
- コンポーネントを調べることで、症状の重さの見通しや、花粉との関連、加熱耐性などを整理する手がかりが増えます
4大切な注意点:コンポーネント診断にも限界があります
コンポーネント診断は便利な考え方ですが、万能ではありません。あくまで「傾向」や「手がかり」であり、個人差があります。確定診断は、検査結果だけでなく、症状の経過・問診・必要に応じた食物経口負荷試験とあわせて、総合的に行うものです。検査結果だけで「症状が出る/出ない」「重症化する/しない」を断定することはできません。
また、コンポーネント検査は、どなたにも一律に行うものではありません。View39などの結果や、実際の症状の経過を踏まえて、必要性を個別に判断しながら検討するものです。
5当院でできること(概要)
松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニックでは、View39による幅広いスクリーニングを起点に、問診で伺った症状の出方とあわせて、必要に応じてコンポーネントレベルでの検査を個別にご相談しています。どのコンポーネント検査が実際に選択肢となるかは、対象となる食品や症状によって異なります。次回以降、代表的な食品ごとに詳しくご紹介していきます。
6まとめ
- View39などのアレルギー検査は、複数のタンパク質が混ざった「粗抗原」への反応を調べるスクリーニング検査です。
- 「アレルゲンコンポーネント」は、その中に含まれる個々のタンパク質そのものを指し、一部は既に日常診療で使われています。
- コンポーネントまで調べることで、症状の重さの見通し、花粉との交差反応の整理、加熱耐性の目安など、さまざまな手がかりが得られることがあります。
- ただし万能ではなく、確定診断は症状の経過・問診とあわせて総合的に行います。
- 気になる症状がある方は、当院にご相談ください。
監修
松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック 院長 松平 秀樹
- 平成6年 東京慈恵会医科大学医学部卒業、医師国家試験合格
- 平成6年 東京慈恵会医科大学付属病院 研修医
- 平成8年 東京慈恵会医科大学 外科学講座入局
- 平成12年 癌研究会附属病院 外科
- 平成13年 東京慈恵会医科大学 呼吸器外科
- 平成21年 独立行政法人国立病院機構東京病院 呼吸器外科
- 平成22年 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 外科
- 平成30年 東京慈恵会医科大学付属病院 呼吸器外科
- 令和4年 町田市民病院 外科(呼吸器外科担当部長)
- 令和7年 松平小児科 副院長
- 令和7年 水谷内科呼吸器科クリニック 開業
- 令和8年 松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック(クリニック名変更)
資格:医学博士/インフェクションコントロールドクター/日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医/日本外科学会 外科専門医
当院では呼吸器内科・アレルギー科の診療、およびView39アレルギー検査を行っております。
WEB予約はこちら電話:03-3867-8141
休診:木曜・土曜午後・日曜・祝日
参考文献
- 一般社団法人 日本アレルギー学会「アレルゲンコンポーネントの測定意義」(2018年5月17日更新)
https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=17 - 日本小児アレルギー学会『食物アレルギー診療ガイドライン2021』ダイジェスト版 第14章「食物以外の抗原感作による食物アレルギー」
https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_14.html - SRL総合検査案内「特異的IgE(Ara h 2)(ピーナッツ由来)」(臨床意義・判定基準)
https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/065040200 - LSIメディエンス「アレルゲン検査(アレルゲン特異的IgE)項目一覧」(検査項目の確認。2026年8月時点)
https://www.medience.co.jp/clinical/allergy/itemlist.html - 食物アレルギーの診療の手引き2023(厚生労働省補助事業)
本記事は医療・健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療を保証するものではありません。症状や検査結果の解釈については、必ず担当医師にご相談ください。記載内容は執筆時点(2026年8月)の情報に基づいています。本記事は医療広告ガイドライン(厚生労働省)を遵守して作成されています。特定の検査の組み合わせ・治療プロトコルの詳細は、個別の診療内容にあたるため本記事では割愛しています。