- 2026年7月27日
その「あせも」、実は蕁麻疹かもしれません──夏に悪化する蕁麻疹とアレルギー科でできること
アレルギー科コラム
その「あせも」、実は蕁麻疹かもしれません──夏に悪化する蕁麻疹とアレルギー科でできること
「汗をかくと、二の腕や首まわりに小さなブツブツが出て、チクチク・ピリピリする」「お風呂上がりや運動の後に、決まって皮膚が赤くなる」──こうした症状を「あせも(汗疹)」だと思って市販薬で様子を見ている方は少なくありません。しかし、汗や体温の上昇そのものがきっかけで起こる蕁麻疹(じんましん)という病態もあり、見た目や状況が似ているため区別しにくいことがあります。
この記事では、日本皮膚科学会が2026年4月に公表した最新の「蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)」に基づき、夏に悪化しやすい蕁麻疹の特徴と、繰り返す蕁麻疹について何が分かっていて何が分かっていないのか、そして呼吸器内科・アレルギー科としてどのようなお手伝いができるかを、実際の対応範囲に沿って正確にご説明します。
この記事でわかること
- 「あせも」と「蕁麻疹」の違い
- 汗や体温上昇がきっかけで起こる蕁麻疹(コリン性蕁麻疹)の仕組み
- 慢性的に繰り返す蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹)の多くは、実は原因が特定できないタイプであること
- 血液検査(View39等)が役に立つ場合と、そうでない場合の違い
- 当院でご相談いただけること
1「あせも」と「蕁麻疹」は、見た目が似ていても別のものです
あせも(汗疹)は、汗の通り道(汗管)が汗や汚れで詰まり、皮膚の中に汗が溜まってしまうことで起こる、小さな水ぶくれ状の発疹です。一方、蕁麻疹は皮膚の中の「マスト細胞」という細胞からヒスタミンなどの物質が放出されることで、皮膚がふくらんで赤くなる「膨疹(ぼうしん)」という状態で、一部の例外を除き24時間以内(多くは数十分〜数時間)に跡形もなく消えるのが特徴です。
※マスト細胞は以前「肥満細胞」と呼ばれていましたが、脂肪細胞と混同されやすいことから、蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)では「マスト細胞」に名称が統一されました。肥満とは関係のない細胞です。
あせもは同じ場所に発疹が留まりやすいのに対し、蕁麻疹は出たり消えたりを繰り返しながら場所を変えていくことが多く、かゆみやチクチク感を伴うことが目立つ点も異なります。市販の保湿剤やあせも用の薬を使っても改善しない、頻繁に繰り返す、という場合は、蕁麻疹の可能性を考えてみる価値があります。
2汗や体温上昇がきっかけになる蕁麻疹(コリン性蕁麻疹)
入浴・運動・精神的緊張など、発汗またはそれを促す刺激が加わったときに出る蕁麻疹は「コリン性蕁麻疹」と呼ばれ、ガイドライン上は「刺激誘発型の蕁麻疹」に分類されます。汗腺を支配する神経から放出されるアセチルコリンという物質が皮膚のマスト細胞を刺激し、ヒスタミンが放出されて症状につながると考えられています。皮疹は粟粒大〜小豆大(おおむね1〜5mm程度)の、互いにくっつきにくい小さな膨疹や紅斑が多数出るのが特徴で、チクチク・ピリピリとした刺激感や、かゆみではなく痛みとして感じられることもあります。個々の皮疹は、出現後おおむね数分〜2時間以内に消えていくことが多いとされています。小児から30歳台前半までの方に比較的多くみられます。
きっかけは、食べ物や花粉といった外からのアレルゲンではなく、発汗そのものや体温の上昇です。ただし近年は、自分自身の汗の成分に反応するタイプ(汗アレルギー型)を含めていくつかの類型に分けられることが報告されており、「まったくアレルギーと無関係」と言い切れるものでもありません。いずれにせよ、真夏に汗をかく機会が増えるこの時期は、症状が出やすくなる方が増える時期です。
蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)では、治療の基本として、眠気の出にくい「非鎮静性の第2世代抗ヒスタミン薬」が第一選択として推奨されています。市販薬で改善しない場合や、症状が頻繁で日常生活に支障が出ている場合は、医療機関での治療を検討する時期です。
- まぶたや唇の腫れ(血管性浮腫)を伴う
- 息苦しさ・ゼーゼーする・のどが詰まる感じ・血圧低下やめまいなど、皮膚以外の症状を伴う
- 汗をほとんどかかなくなった、あるいは汗の量が明らかに減った
コリン性蕁麻疹はまれに重症化してアナフィラキシーに近い症状を呈することがあり、また汗が出にくくなるタイプでは別の対応が必要になる場合があります。呼吸が苦しい・意識が遠のくといった症状があるときは、様子を見ずに救急要請を含めた対応をご検討ください。
3慢性的に繰り返す蕁麻疹――多くは「原因不明」であることも、大切な情報です
はっきりしたきっかけがないのに自然に膨疹が出没する蕁麻疹を「特発性の蕁麻疹」と呼び、発症から6週間以内を「急性特発性蕁麻疹」、6週間を超えて続くものを「慢性特発性蕁麻疹」と呼びます(ガイドライン2026で、従来の「慢性蕁麻疹」に”特発性”を加えた病名に変更されました)。決してまれな病気ではなく、国内の推定有病率は1.2〜1.6%、およそ200万人の患者さんがいると推計されています。
ここで正直にお伝えしておきたいのは、慢性特発性蕁麻疹では、詳しく調べても病態の全体を説明できる特定の原因(食べ物やアレルゲンなど)が見つからないことがほとんどだという点です。蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)でも、蕁麻疹以外に明らかな所見がなく、症状にも特別な特徴がない場合には、原因を探すための網羅的な検査を行うことは慎むべきとされています。すべての蕁麻疹に一律にⅠ型アレルギー検査や一般的な生化学検査を行うべきではない、という姿勢は2018年版より明確に打ち出されました。
これは「検査をしても意味がない」ということではありません。近年の研究では、慢性特発性蕁麻疹の背景には、外から入るアレルゲンよりも、自分自身の成分に対するIgE抗体や、IgE・その受容体に対する自己抗体といった自己免疫的な仕組みが関わっていることが分かってきました。つまり「食べ物のアレルギー検査を広く行っても答えが出にくい」病気であり、まずは丁寧な問診と、ガイドラインに沿った抗ヒスタミン薬による治療が基本になります。誇張せずにお伝えすることが大切だと考えています。
なお、ガイドライン2026では治療の第一目標が「治療により症状が現れない状態」から「治療により生活に支障がない状態」へと変更されました。まず日常生活を取り戻し、そのうえで症状ゼロ、最終的には薬なしで症状が出ない状態を目指す、という段階的な考え方です。
「Ⅰ型アレルギー(即時型アレルギー)」とは
アレルギー反応にはいくつかの型がありますが、食物アレルギーや花粉症、蕁麻疹の一部で見られるのは「Ⅰ型アレルギー」で、アレルゲンが体に入ってから比較的短時間(直後〜2時間以内)に症状が出るため「即時型アレルギー」とも呼ばれます。
仕組みとしては、特定のアレルゲン(食べ物やダニ、花粉など)に対して「特異的IgE抗体」という物質がつくられ、これが皮膚や血液中の「マスト細胞」に結合して待機した状態(感作)になります。ここに同じアレルゲンが再び入ってくると、マスト細胞からヒスタミンなどの物質が放出され、蕁麻疹などの症状が引き起こされます(本記事の「1」でご説明したマスト細胞と同じものです)。
血液検査(特異的IgE検査・View39など)は、この「特異的IgE抗体」が体の中にあるかどうかを調べる検査です。そのため、Ⅰ型アレルギーが疑われる場合(特定の食べ物や状況と症状の関連がはっきりしている場合など)には検査が助けになりますが、原因となるアレルゲンがはっきりしない慢性特発性蕁麻疹では、検査をしても特異的IgE抗体が見つからないことが多く、有用性は限定的です。
- 「特定の食べ物を食べた後に決まって症状が出る」など、詳しい問診でⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)が疑われる場合
- 蕁麻疹以外に、呼吸器症状(喘鳴・咳)や口の中のかゆみなど、他のアレルギー疾患を疑わせる症状を伴う場合
- 喘息やアレルギー性鼻炎などを合併しており、吸入アレルゲンも含めて全体像を一度整理しておきたい場合
ガイドライン2026では、Ⅰ型アレルギーが疑われる病歴がある場合に「疑わしい抗原に対して個別の検査を選択的に行う」ことが基本とされています。View39のように複数項目をまとめて調べる検査は、複数のアレルゲンや他のアレルギー疾患の関与が想定される場合に、その一手段として選ぶことがあります。
逆に、典型的な慢性特発性蕁麻疹で他に症状がなく、抗ヒスタミン薬で改善が見られる場合は、血液検査を行わずに治療を進めることも、ガイドラインに沿った標準的な対応です。どちらが適切かは、問診の内容をもとに医師が判断します。
また、症状が典型的でない場合や治りにくい場合には、アレルゲンの検査とは別に、血清総IgE値・甲状腺の自己抗体(抗TPO抗体)・CRPなどを調べることで、治療への反応を見通す手がかりになることがあるとされています。
4当院でご相談いただけること
当院は呼吸器内科・アレルギー科として、喘息や花粉症などの気道アレルギーに加え、詳しい問診を通じてアレルギーが関与しているかどうかを整理する診療も行っています。蕁麻疹そのものの専門的な治療(重症例への専門的な薬剤選択や、難治例の紹介)は皮膚科と連携いただく場合もありますが、次のような点は、当院でも診療の入り口としてご相談いただけます。
詳しい問診による整理
いつ、どこで、何をした後に症状が出るか、他に症状はないかを詳しくうかがい、コリン性蕁麻疹のような物理的な刺激によるものか、アレルギーの関与が疑われるものかを整理します。
必要な場合の血液検査(特異的IgE検査・View39等)
問診の結果、特定の食べ物やアレルゲンとの関連が疑われる場合には、疑わしい抗原を個別に調べる特異的IgE検査や、39項目をまとめて調べられる血液検査(View39)などを選択肢としてご案内することがあります。すべての蕁麻疹に一律で行うものではなく、問診に基づいて必要性を判断します。
他のアレルギー疾患との関連の確認
気管支喘息やアレルギー性鼻炎など、他のアレルギー疾患を合併している場合、全体として診療を整理できることがあります。
「あせもだと思っていたけれど、実は繰り返す蕁麻疹だった」という場合や、汗をかくたびに症状が気になる場合は、一度ご相談ください。
5まとめ
- あせもと蕁麻疹は見た目が似ていますが、起こる仕組みが異なり、蕁麻疹は出たり消えたりを繰り返すのが特徴です。
- 発汗や体温上昇がきっかけで起こる「コリン性蕁麻疹」は、食物アレルギーとは別の仕組みで起こり、この時期に症状が出やすい方が増えます。まぶた・唇の腫れや息苦しさを伴う場合は早めの受診を。
- 慢性的に繰り返す蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹)の多くは特定の原因が見つからないもので、蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)でも、典型的なケースに網羅的な検査を行うことは慎むべきとされています。
- 詳しい問診でⅠ型アレルギーが疑われる場合には、疑わしい抗原を選んで調べる血液検査(View39等を含む)が選択肢になることがありますが、一律に行うものではなく、医師の判断によります。
- 治療の第一目標は「治療により生活に支障がない状態」に置くことがガイドラインで示されています。市販薬で改善しない、繰り返す、他の症状も伴う、という場合は、一度ご相談ください。
監修
松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック 院長 松平 秀樹
- 平成6年 東京慈恵会医科大学医学部卒業、医師国家試験合格
- 平成6年 東京慈恵会医科大学付属病院 研修医
- 平成8年 東京慈恵会医科大学 外科学講座入局
- 平成12年 癌研究会附属病院 外科
- 平成13年 東京慈恵会医科大学 呼吸器外科
- 平成21年 独立行政法人国立病院機構東京病院 呼吸器外科
- 平成22年 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 外科
- 平成30年 東京慈恵会医科大学付属病院 呼吸器外科
- 令和4年 町田市民病院 外科(呼吸器外科担当部長)
- 令和7年 松平小児科 副院長
- 令和7年 水谷内科呼吸器科クリニック 開業
- 令和8年 松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック(クリニック名変更)
資格:医学博士/インフェクションコントロールドクター/日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医/日本外科学会 外科専門医
場所:練馬区東大泉6-51-4 TKマンション1F(大泉学園駅南口から徒歩4分)
電話:03-3867-8141
休診:木曜・土曜午後・日曜・祝日
参考文献
- 公益社団法人 日本皮膚科学会 蕁麻疹診療ガイドライン策定委員会「蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)」日本皮膚科学会雑誌 136巻4号 375-493頁(2026年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/136/4/136_375/_article/-char/ja - 公益社団法人 日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)」全文PDF
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/2013/08/fd75d78b6dc0a9199d380222719cd41b.pdf - SRL総合検査案内「特異的IgE(View アレルギー39)」
https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/0B9200200 - 日本アレルギー学会「アレルギーポータル」アレルギーとは(Ⅰ型アレルギーの機序)
- Kemp SF, et al. Type I Hypersensitivity Reaction. StatPearls, NCBI Bookshelf
本記事は医療・健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療を保証するものではありません。症状の原因や検査の必要性は個人差が大きいため、必ず医師にご相談ください。記載内容は執筆時点(2026年7月)の情報に基づいています。本記事は医療広告ガイドライン(厚生労働省)を遵守して作成されています。