- 2026年9月16日
いびき・朝の疲れ・日中の眠気、年齢のせいにしてませんか? 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の基礎知識とセルフチェック【医師監修】
「最近いびきがひどい」「朝起きても頭が重い」「昼間どうしても眠くなる」——そのつらさ、「年齢のせい」や「疲れのせい」と片付けていませんか?
実は、これらは睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインかもしれません。SASは日本だけで940万人以上の潜在患者がいるとも言われながら、治療を受けているのは約50万人程度。その多くが「まさか自分が」と気づかないまま過ごしています。
この記事では、SASとは何か、日中の眠気をどう確かめるか、検査で分かる「AHI」とは何か、そしてどこに相談すればよいかをわかりやすくお伝えします。
① まず確認!日中の眠気セルフチェック(エプワース眠気尺度:ESS)
当院では、日中の眠気の程度を「エプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale:ESS)」で確認しています。世界的に使われている質問票で、日本語版の信頼性も検証されています。次の8つの場面で「うとうとする(居眠りする)」可能性を、0〜3の4段階で答えてください。
点数のつけ方:0=うとうとすることはない/1=ときどきうとうとする/2=しばしばうとうとする/3=高い確率でうとうとする
- 座って読書をしているとき
- テレビを見ているとき
- 会議や劇場など、人の集まる場所でじっと座っているとき
- 乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき
- 午後、横になって休んでいるとき
- 座って人と話しているとき
- 昼食後(飲酒なし)、静かに座っているとき
- 自動車を運転中、渋滞や信号で数分間止まっているとき
結果の見方(合計0〜24点)
- 10点以下:日中の眠気は正常範囲とされます(ただし、いびきや無呼吸を指摘されている方はご相談ください)
- 11点以上:日中の眠気が強い状態とされ、SASなど睡眠の問題が隠れている可能性があります。一度ご相談ください
※ ESSは「眠気の強さ」を測る質問票で、SASの診断を行うものではありません。SASの方の中には眠気を自覚しない方もいますので、点数が低くてもいびきや呼吸の停止を指摘されている場合は医師にご相談ください。
② 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
定義
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、眠っている間に呼吸が繰り返し止まる(または極端に浅くなる)病気です。医学的には、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI:無呼吸低呼吸指数)が5回以上で、日中の眠気などの症状がある場合にSASと診断される可能性があります。
なぜ呼吸が止まるの?メカニズム
最も多いタイプは「閉塞性SAS(OSAS)」で、眠ると筋肉がゆるみ、のどの奥(上気道)が塞がれることで起こります。
🌙 眠る → のどの筋肉がゆるむ → 舌や軟口蓋が落ち込んで気道が狭くなる(または塞がれる) → 呼吸が止まる(無呼吸) → 血液中の酸素が低下し、脳が短く目を覚まして呼吸再開 → また眠る……この繰り返しが一晩に数百回起きることもあります。
この繰り返しによって深い睡眠が得られず、疲れが取れないままになります。本人は目が覚めた自覚がないため、「たっぷり寝た」つもりでいることが多いのも特徴です。
③ 検査で分かる「AHI」——なぜ検査が大切なのか
AHI(無呼吸低呼吸指数)とは
AHI(Apnea Hypopnea Index)は、睡眠1時間あたりに「呼吸が止まる(無呼吸)」または「呼吸が浅くなる(低呼吸)」回数を表す数値です。SASの重症度はこのAHIで評価します。
| 重症度 | AHI(回/時間) |
|---|---|
| 正常 | 5未満 |
| 軽症 | 5〜15未満 |
| 中等症 | 15〜30未満 |
| 重症 | 30以上 |
いびきや眠気だけでは分からない——だから検査が大切
AHIは、いびきの大きさや眠気の強さからは推定できません。眠気をあまり感じていない方でもAHIが高いことがあり、逆に眠気が強くてもSAS以外の原因のこともあります。ご自分のAHIを知る唯一の方法は、睡眠中の呼吸を実際に記録する検査を受けることです。
検査には、ご自宅で一晩眠るだけでできる「簡易検査(簡易PSG)」と、脳波や睡眠の深さまで詳しく記録する「精密検査(PSG)」があります。当院ではどちらもご自宅で受けていただけます。まず簡易検査でAHIの目安を調べ、必要に応じて精密検査に進むのが一般的な流れです。
AHIが分かると、治療の必要性や方法(生活習慣の見直し、マウスピース、CPAP療法など)を具体的に検討できます。CPAP療法を公的医療保険で行う基準もAHIで定められており、2026年6月の改定で精密検査ではAHI 15以上、簡易検査では(自覚症状が強い場合)AHI 30以上に引き下げられました。以前に検査を受けて「対象外」とされた方も、状況が変わっている可能性があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
SASは、高血圧や心臓・血管の病気、糖尿病などとの関連が報告されている病気ですが、適切に検査・治療をすれば症状の改善が期待できます。「気づいて・調べて・必要なら治療する」ことが大切です。
④ 日本の現状——「気づいていない」940万人の問題
国内の潜在患者数は940万人以上、実際に治療中の方は約50万人と推計されています。つまり、多くの方が未診断・未治療のままという計算になります。背景には次のような理由があります。
- 💤 「いびきは恥ずかしいから」と家族に言い出せない
- 😴 日中の眠気を「疲れているだけ」と片付けてしまう(SAS患者の約半数は自覚的な眠気がないとも報告されています)
- 🏠 一人暮らしのため、無呼吸を指摘してくれる人がいない
- 🏥 「どこで受診すればいいかわからない」
⑤ こんな人は要注意!SASのリスク因子
SASになりやすい体質や生活習慣があります。以下に当てはまる方は、特に注意が必要かもしれません。
- 男性・中高年:男性は女性より頻度が高く、特に40〜60代で有病率が上昇します
- 肥満・首が太い:BMI25以上・首周り40cm以上は気道が狭くなりやすいため要注意。ただし、やせ型でもSASになる場合があります
- あごが小さい・引っ込んでいる:日本人はあごが小さい骨格の方が多く、太っていなくてもSASになりやすい傾向があります
- 飲酒・喫煙習慣:アルコールは筋肉をゆるめ気道を塞ぎやすくします。喫煙は気道の炎症を悪化させます
- 睡眠薬・抗不安薬の使用:一部の薬が筋弛緩作用をもつことで、無呼吸を悪化させることがあります
- 仰向けで寝る:仰向けでは舌が落ちやすく、気道が閉塞しやすい姿勢です
- 家族にいびきが多い:骨格の形や体質は遺伝の影響を受けます
- 扁桃・口蓋垂が大きい:のどの構造上、気道が狭くなりやすい方もいます
「当てはまる項目がある」という方は、まず医師に相談することで今の状態を把握できます。心配しすぎず、気軽に受診してみてください。
⑥ どこで診てもらえるの?
SASについて相談したいとき、「何科に行けばいいの?」と迷う方は少なくありません。SASの診断・治療は、呼吸器内科のほか、睡眠障害内科(睡眠外来)、耳鼻咽喉科、循環器内科など、複数の診療科で行われています。お住まいの地域で睡眠時無呼吸の検査・治療を行っている医療機関にご相談ください。
診察の流れ(一般的なケース)
- 問診・身体診察:症状の聴取(いびき・眠気・夜間の様子)、ESSによる眠気の確認、体重・首周りの計測、のどの観察など
- 簡易検査(自宅でできる):自宅に機器を持ち帰り、いつも通り寝るだけ。指や鼻にセンサーをつけ、無呼吸の回数(AHI)や酸素飽和度を記録します
- 結果に応じて精密検査または治療:AHIと症状をあわせて、生活習慣の改善、マウスピース(口腔内装置)、CPAP療法(鼻にマスクをつけて空気を送る治療)などを検討します
- CPAP療法中は遠隔モニタリングも:機器の使用状況やAHIをデータで確認でき、通院の負担を減らしながら治療を続けられる仕組みがあります
松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニックについて
当院でも、睡眠時無呼吸症候群の検査・治療を行っています。「いびきが気になる」「朝起きると疲れている」「日中眠い」といったお悩みを、お一人おひとりに寄り添ってお聞きします。簡易検査・精密検査ともにご自宅で受けていただけますので、忙しい方でも受診しやすい体制を整えています。簡易検査をご希望の方は、事前にお電話(03-3867-8141)ください。
所在地:東京都練馬区東大泉6-51-4 TKマンション1F(西武池袋線・大泉学園駅南口から徒歩4分)
⑦ まとめ——「気づき」が最初の一歩
- SASは日本に940万人以上の潜在患者がいるが、治療を受けているのは約50万人のみ
- 「いびき」「朝の疲れ」「日中の眠気」は単なる疲労ではなく、SASのサインかもしれない
- 日中の眠気はESS(エプワース眠気尺度)で確認できる。11点以上なら一度相談を
- SASの重症度はAHIで決まり、AHIは睡眠中の呼吸を記録する検査でしか分からない。まずは自宅でできる簡易検査から
- SASは呼吸器内科・睡眠障害内科など複数の診療科で診療されている。適切な検査・治療で症状改善が期待できる
「もしかして…」と思ったら、お気軽にご相談ください。
監修医師プロフィール
松平 秀樹(まつだいら ひでき)
松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック 院長
資格:医学博士/日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医/日本外科学会 外科専門医
卒業:平成6年 東京慈恵会医科大学医学部卒業
経歴:癌研究会附属病院・東京慈恵会医科大学・国立病院機構東京病院・町田市民病院 勤務を経て、令和7年10月に開業(令和8年4月より現名称)
参考文献・引用元
- 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の対象基準)
- Johns MW. A new method for measuring daytime sleepiness: the Epworth sleepiness scale. Sleep. 1991;14(6):540-545.
- Takegami M, et al. Development of a Japanese version of the Epworth Sleepiness Scale (JESS) based on item response theory. Sleep Medicine. 2009;10(5):556-565.
- 日本循環器学会「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(2023年改訂版)」
- ケアネット「睡眠時無呼吸症候群の国内の潜在患者数は940万人以上」
本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を行うものではありません。症状に関しては必ず医師にご相談ください。内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の医療情報とは異なる場合があります。
監修:松平 秀樹(松平 呼吸器内科・アレルギー科クリニック 院長)|最終更新:2026年9月